"Jazz Impressions of A Boy Named Charlie Brown: Expanded Edition"のCDを聴く
一昨日、このアルバムのリリースにまつわる話についてライナーノートで知ったことなどを書きましたが、今日は収録曲についてです。
まず、リマスタリングについてですが、全体的にペシャっとしたサウンドだったのが改善されてかなり聴きやすくなっていまして、ここは良かったと思います。ただ、曲によって今一つステレオ感が弱いようなミックスもあったんですが、ここまでは改善できなかったのは残念です。まあ贅沢ですが。
ただ、ヴィンス・ガラルディの代表作ともいえる「黒いオルフェ」では、旧盤CDなどでドラムとベースが曲によって左右入れ替わったりドロップアウトがあったりといった問題点がリマスター盤ですべて改善され劇的に聴きやすくなったといった例もありましたんで、多少は期待していました。
ともかく、今後このアルバムを購入する(日本の会社がCDをリリースする)場合は、こちらのヴァージョンにしていただきたいなと感じます。
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続いてDisc2の未発表音源です。曲順はオリジナル版ではなく未発表音源のものです。
Disc2は「ライナス・アンド・ルーシー」のスタジオ・テスト・ヴァージョンで幕を開けます。そうなんですよね。「ライナス・アンド・ルーシー」が初めて世に出たのはこのアルバムなんですよね。早めのテンポでサッとピアノで弾いていますが、粗削りながらもテーマ~ブリッジ~エンディングという曲の構成は既に確立されています。リー・メンデルソンはコレを聴いて「なぜか私の人生全体に影響を与えるような確信を持った」と思ったそうですが、70年代からピーナッツのTVスペシャルを観てきたワタシとしても、コレがピーナッツの代表曲だという刷り込みがない状態でも最も印象的な曲だと思いましたし、この曲には特別なマジックがありますね。
次いで2曲目に収録されているテイク3ではブラッシュアップされたトリオ演奏になっていますが、なぜかテストであったブリッジやエンディングが消えてしまっています。これは不思議ですね。逆だったらわかりますが。「とりあえずテーマ部分だけトリオで演奏してみようか」という感じで録ったんでしょうかね。
3曲目は「ハピネス・テーマ(Take4)」。完成版では「ハピネス・イズ」にタイトルが変わっています。このTake4はほぼ完成形ですが、ひょっとするとこっちの方が好きかもしれません。中間のソロもいい感じですし。エンディングについては完成版の方が考え抜かれている感じがしますが、こちらのように消え入るような終わり方をしているのも味があっていいですね。
4曲目は「ペブル・ビーチ(Take7)」で、7テイク目ですからもうほとんど完成されています。ブリッジのピアノ・ソロはこちらと完成版とどちらが好みかという違いしかないように思います。ほとんど差はありません。ただ、その後テーマに戻ってからエンディングに向っていくところの展開は基本的に同じ枠組みでありながら完成版の方が良いように思えます。テイク7の方がフェイドアウトしていないにも関わらずタイムが短いというところを見ても、完成版の方が明らかにノッてますね。
「ベースボール・テーマ」は5曲目(Take1)と8曲目(Take2)とで2ヴァージョン収録されています。テイク1はブリッジがほとんどない尺の短いヴァージョンで、ほぼ原型と言った感じでしょうか。テイク2は短いブリッジがあってやや長くなっていますが、まだ完成形には及んでいない感じがします。一応これもフェイドアウトなしで全曲聴けますので、ちゃんとクロージングまで聴けるというのは利点と思いますが。あと、リズムが微妙に違いますね。
「オー・グッド・グリーフ」も6曲目(Take1)と9曲目(Take1 Later session)とで2ヴァージョン収録されています。テイク1はテーマからソロに入ったと思ったらあっという間に終わります。テイク1ですし、これもほぼ原型なんでしょうな。レイターセッションの方は思わせぶり(?)なフレーズが続いた後1分30秒くらいしてようやくテーマが出てくるという構成です。これもフェイドアウトなしで全曲聴けます。って、フェイドアウト曲が多いですね、このアルバム。
11曲目は「ブルース・フォー・ピーナッツ」です。これは「ブルー・チャーリー・ブラウン」の原曲と思われます。「ブルー~」よりもキーが高くなっていますが、低い方がブルージーでいいと思って録り直したんでしょうな。因みにこの曲(テイク)は2009年のガラルディのベストアルバム "the definitive Vince Guaraldi" にも収録されていますので初登場ではありません(曲のラストに「ライナス・アンド・ルーシー」のフレーズがお遊びで入ってますが、そこも一緒です)。
で、「ブルー・チャーリー・ブラウン」の方はテイク1が13曲目に収録されています。完成版が7分27秒であるのに対し、こちらは5分27秒と2分短くなっていますが、完成版がラスト近くで速弾きになるのに対しこちらは前半から速弾きで攻めているところと、ソロの後にテーマに戻って所謂「Aトレイン」のエンディングで終わるというところが大きな違いです。これはこれでベタですがイイですね。こちらのテイクも捨てがたいです。
12曲は「チャーリー・ブラウン・テーマ(Take4)」ですが、何とキーが低いですね。ブリッジのソロも大筋は同じですが、テーマに戻る前にちょっと小休止のようなパートが挿入されているところと、これまた「Aトレイン」のエンディングで締めくくられるというところが違います。「Aトレイン」で終わった曲は全部ボツなんでしょうか??
14曲目は「フリーダ(Take1)」です。このテイクは2010年に60周年記念盤として発売されたCD「ピーナッツ・ポートレイツ」に "Alternate Version" として収録されていたものと同じで、初登場ではありません。これは完成版が4分38秒なのに対して6分10秒と長尺になっています。完成版は『テーマ~ブリッジ~テーマ~ブリッジ~テーマ』という構成で、最後のテーマ部分でフェイドアウトで終わるんですが、テイク1はその後にもう一回『ブリッジ~テーマ』があるんですね。長尺になっているのはそれが理由です。しかし、そこを除けば構成も同じですしソロも結構似ています。細部でどちらが好みなのかという話にもなりますが、甲乙付け難いというか大差ないというか…。難しいですね。
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長々書いてきましたが、今日はこの辺で。あと1曲「シュローダー」を残していますが、これはまた改めて。
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