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2025年3月

2025.03.27

再考:ピーナッツ日本上陸〇〇周年の根拠とは?

2018年は「ピーナッツ日本上陸50周年」と言われ、いくつか催しがあったと記憶しています。2028年には60周年が祝われることが濃厚です。あと3年ありますが、3年しかないとも言えますので、今のうちに少し整理を始めるのもいいかと思います。

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当時の産経新聞に記事では、『ソニー・クリエイティブプロダクツ(東京都港区)によると、日本で初めてピーナッツのキャラクター商品が作られたのは昭和43年』と書かれていました。言い出しっぺはライセンシーであるソニーということなんでしょうが、1968年に何があったのかは明記されていません。

普通に考えますと、そのキャラクター商品が何であるのか写真付きで紹介されていそうなものですが、そういった具体的な話は一切なく、ただ1968年という数字だけがまかり通っているという感じでした。

何が1968年に登場したのか?。候補と考えられるのは主に3つです。鶴書房のピーナツブックスと、ファミリアのぬいぐるみと、サンリオのグッズ、といったところでしょう。

まずピーナツブックスですが、「全日本出版物総目録 昭和44年版」によりますと、『4月、12月 12冊 各240円』という記述とともに1巻から12巻までのタイトルが羅列されていますので、1969年4月に刊行開始されたと考えられます(他の書籍でも裏付けは取れていますが割愛します)。ということで、除外です。

ファミリアのぬいぐるみはどうでしょう。「実践・キャラクター戦略:イメージアップの商品学」(1975年刊)を見ますと、創業者である坂野淳子専務が『四十五年四月からスヌーピーのぬいぐるみを売り出したが』と取材に対して語っていますので、これも1970年ということで除外ですね。

最後にサンリオはどうでしょうか。「日本ライセンシング年鑑 1983~84」という本にサンリオがピーナッツのライセンシーになった時のことが書かれていますが、『サンリオ・グリーティングがホールマークの日本代理店として発足した昭和44年には』という記述があります。また、「実例・企業の競争戦略シリーズ 2」(1977年刊)のサンリオについての記述でも『四十四年、平凡社、日本クロスと資本金一億円のサンリオグリーティングを設立、アメリカのホールマークカード社のライセンシーをとる』となっており、サンリオが1968年にはピーナッツのグッズを発売していなかったことが裏付けられますので除外となります。

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では、1968年に発売されたキャラクター商品とは何だったのか?”日本で初めてピーナッツのライセンシーになったのはサンリオ”という通説を信じるのであれば、日本企業ではなく必然的に海外企業ということになります。

「実業の世界」(1976年刊)の『いま見直される「キャラクター戦略」』という章の中で『昭和四十八年頃から「ホールマーク」ブランドのグリーティング・カードの専用機が、百貨店や一般販売店々頭に登場したことは、ご記憶だろうか』と書かれています。ホールマーク社は日本市場を視野に入れて60年代後半からグリーティングカードの販売を始めていました。恐らくはこのホールマーク社の上陸というのが日本上陸のことではないか、と推測されます。

ホールマーク社の歴史についてはまだあまり資料を読み込めていませんので、ここは継続して調べようと思います。

因みに、日本にはそういうカード文化が無かったため売り上げ不振で一旦撤退し、のちにサンリオがライセンシーとなりますがサンリオはカードではなくキャラクターを使用した別商品を販売し、それがヒットにつながっっていった・・・という流れになっていきます(複数の本に書かれていたことを雑多にまとめるとこんな感じです)。

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改めて考えてみますと「日本上陸」の定義って何なんでしょうね。輸入品であってもそれが初めてであれば初上陸ということになるんでしょうか(確かに上陸という表現は合っていますが)。消費者庁にでも問い合わせれば指標を出してくれますでしょうか。

しかしそれを言ってしまいますと、1966年にリリースされたロイヤルガーズメンのレコード「SNOOPY VS. THE RED BARON」はどうなんだ、とか、同じく1966年に日本の出版社により刊行された「ピーナッツ福音書」はどうなんだ、とか、色々と異論が浮かんできてしまいます。

個人的には2028年になっても何の催しも行われず自然消滅して無かったことになるのが一番平和的解決策のようにも思えますがね。

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2025.03.22

「チャーリー・ブラウンのイースター」のサントラを聴く

3月21日、ついに「チャーリー・ブラウンのイースター」のサントラ盤が発売になりました。例のごとくCDの入手には時間がかかりますので今回も配信で聴いたところです。

詳しいことはCDが手元に届いてから書きますが、まずは聴いた感じでの雑感をば。

本作のセッションで録音された曲はとても少ないようです。これまでのサントラですとアウトテイクなどが多数収録されていましたが、今回はそういったものが全くありませんでした。このTVスペシャルはセリフなしのシーンが意外と多く音楽が鳴りっぱなしなんですが、それでも全部で22分というのは随分と短いですな。ラストにデヴィッド・ベノワのトリオによる「ウッドストック・メドレー」という7分の新録が収録されていて、それで何とかトータル29分になっています。

一つ一つのカットの長さに合わせた短い曲をどんどん録っていったという感じがします。あまりメロディを作り込まずリフだけ決めてあとはジャムるという感じの無駄の少ないセッションだったんでしょう。まあ長ければいいということでもなく、ワタシはこの内容で満足しています。

一番驚いたのは、エンドテロップの曲が単独で録音されていなかったという事実です。タイトル曲とエンドテロップの曲は実は1曲で、オンエアでは分断して使っていたんですな。しかしこうやって1曲として繋がっているのがこの曲の美しさを一層引き立てています。こういうメロディが繰り返し出てくるというのを何というのかちょっと言葉が見つかりませんが、正式な用語はあると思います。バロック音楽なんかでありそうな曲構成ですな。

サウンドはすごくラウドでした。これにもびっくりしましたね。Apple TV+でアニメ本編を視聴できますが、それと比べても随分と印象が違います。特にウッドストックのエレベーターごっこでかかる「Snoopy and Woodstock」という曲が低音が凄いです。

話は逸れますが、このエレベーターごっこのシーンはコミックを読んでいない人にはとてもわかりづらい演出になっていまして、基本的にアメリカの視聴者はコミックを読んでいるので理解できたと思いますが、日本では殆どの視聴者には伝わらなかったんではないかと思います。これはアニメの話ですが…。

デヴィッド・ベノワの新録は、収録曲として浮かないようにアレンジされています。これは中々にイイです。

CDの到着が待ち遠しいです。ガラルディは何故大事なシーンの曲を自作ではなくベートーヴェンにしたのか、とかの謎が解けるといいなと思っています。

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2025.03.12

いわさきちひろに負けるな

スマホでニュースを見ていたところ、「行ってみたい!東京の美術館ランキングTOP20」というものが出てきましたのでちょっとネタにしますが、これにスヌーピーミュージアムが入っていないといってケチを付けるのは野暮かもしれませんね。

都下の美術館は300超ありますし、そんな世界線で「キュレーターがいない」「かと言って特に専門職員の充実を図るつもりもない」「美術館として不可欠な調査・研究を全くしていない」という、決して質が高いとは言えない美術館がランキングに入れるわけがないですよね。

って結局ケチを付けてますが。

本家のキュレーターも間違うことがあるわけですから、それをただ与えられたものとして展示しているだけでは信用ができないわけです。既に間違った情報を発信してしまっていますし、本来は研究機関でもある美術館として罪は軽くないと思います。

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まあそれはそれとして、1位が三鷹の森ジブリ美術館だそうです。眺めてみますと硬軟入り混じったバラエティに富んだランキングなわけですが、8位にちひろ美術館が入っているのが何気にすごいですね。

実はいわさきちひろ作品をまともに読んだことはありませんが、すばる書房時代の月刊SNOOPYを読んでいれば広告などで自ずと知れる存在だったわけです。月刊SNOOPYの広告から詩に興味を持って月刊ポエムに行ったり、児童文学に興味を持って月刊絵本に行ったりした人は少なくなかったんじゃないかと思います。

しかし今、いわさきちひろはそんなに人気があるんですね。没故されて50年以上、これぞ正に世代を超えて愛されているという事ではないでしょうか。

片や借り物だらけの美術館、片や所蔵品満載の美術館。勝敗を付けるものでもないですが頑張ってほしいものです。

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2025.03.10

鶴書房、ツル・コミック社、盛光社、すばる書房盛光社、すばる書房…

Local Cactus Club 移転の準備で色々と整理したり新たに調べ直したりと色々しています(コミックは添え物史観対策も)が、ピーナツブックスと月刊SNOOPYの出版社は複雑に入り組んでいてどうにもよく解っていなかったので調べてみました。

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鶴書房は創業1925年ととても古いんですが、とりあえず出版年鑑で1970年代に限って調べました。

まず鶴書房の前に元文社というのがありまして、これは鶴書房の前身になります。出版年鑑にもこの社名は出てきますので登記上だけ残っていたのかもしれませんが、新刊の発行は一切していません。

1970年の段階ではピーナツブックスも鶴書房なんですが、1971年にツル・コミック社という表記が出てきます。これは鶴書房の海外コミック専門部署を子会社として登記したものと思われます。月刊SNOOPYは1971年創刊ですから最初からツル・コミック社でした。

同年、盛光社という会社も現れますが、これも鶴書房の子会社のようです。この頃の3社の棲み分けを雑誌別で見てみますと、

鶴書房:ヤングボウル(ボウリング雑誌)

盛光社:日本児童文学

ツル・コミック社:月刊SNOOPY

というような感じになっています。オールジャンルと絵本など児童文学と海外コミックという棲み分けですな。この3社は所在地・代表電話・社長・営業担当などがすべて同一で、従業員数だけが違っていました。

1973年になりますと、月刊SNOOPYの販売がツル・コミック社から盛光社に移ります。

同年、鶴書房でピーナツブックスと星占い本のヒットに大きく貢献していた編集者(この時点で盛光社の社員)が盛光社を引っ張って独立し、すばる書房盛光社を設立しました。これにより、月刊SNOOPYは鶴書房を離れます。すばる書房盛光社は引き続き絵本・児童文学路線の出版社でしたが、宝石業界を扱ったノンフィクション本を突然出版して社会現象になったりもしました。

ワタシはこれまですばる書房もツル・コミック社や盛光社と同じように鶴書房の子会社だと思っていたんですが、全然別の場所にオフィスを構えた別会社だということが今回わかりました。

盛光社設立⇒月刊SNOOPY移管⇒すばる書房独立、という流れを見ますと、独立するために月刊SNOOPYを奪取したようなお家騒動にも見えますが、真相はわかりません。会社の内情というものは案外外からはわからないものなんですよね。元社員なんなりが暴露でもしない限り白日の下にさらされない真実というものは結構あるものです。しかしとりあえずピーナッツに関しては、単行本=ツル・コミック社で雑誌=すばる書房となり円満にやっていたようですし。

1976年になりますと、すばる書房盛光社から"盛光社"が取れて"すばる書房"となります。ここで盛光社は消えたわけですね。

1979年に鶴書房とすばる書房はどちらも倒産します(こうして考えるとすばる書房は短命でしたね)が、これまで書いてきたように親会社と子会社との関係ではないので連結で倒産したという事でもないようです。鶴書房は7月ですばる書房は8月でした。また、鶴書房は労務倒産と言われていますが、すばる書房は債務超過だったようです。まあ株式がどうなっていたかは判りませんので関係はあったのかもしれませんが。「鶴書房に続いてすばる書房も倒産」という雑誌記事もありました。この年はペップ出版や筑摩書房など中堅出版社の倒産が多い年でした。

あともう一つはっきりしたのは、月刊SNOOPY休刊後のことです。

月刊SNOOPYは1979年8月号が休刊号ですが、この段階ではあくまで休刊なんですね。会社というのは倒産してすぐに無くなるものではなく、債務整理や清算が済むまでは存在はしているわけです。月刊SNOOPYが正式に廃刊になったのは1980年4月となっており、恐らくこれが会社の清算が終わった時なんだと思います。

そして、何とすばる書房はその後復活しています。

すばる書房は月刊絵本という雑誌も出していたんですが、これを1981年7月に季刊絵本として復刊させています。その他、和田誠の本などを出版していました。これは知りませんでした。因みにこの復活すばる書房は所在地が水道橋から高田馬場へ移っています。

とはいえ、ピーナッツの権利は既に角川書店に移っていて、月刊SNOOPYの復刊はありませんでした。

角川書店は季刊スヌーピーマガジンというのを出す予定でしたので、これに旧すばる書房のスタッフが絡んでいたのか否か。そもそもなぜ角川書店はこれを刊行しなかったのか。まだまだ色々謎はありますが、とりあえず鶴書房とすばる書房関連はこんな感じです。

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2025.03.09

ミュージアムの図録と、KADOKAWAの新しいピーナッツの叢書

昨日からスヌーピーミュージアムの新しい企画展「ピーナッツ・ギャングのスクールライフ」が始まっております。

ワタシは又ぞろ図録でお茶を濁しますが、図録の一般発売日は3月31日なんですね。複数の物販サイトを調べましたが、どこでも一律でしたのでそうなんでしょう。

ミュージアムに行けばすぐに買えるんでしょうが、行ったら行ったで展示を見るわけですから、図録で済まそうと思っているワタシとしては本末転倒なのでそれはできません。まあゆっくり待ちましょう。

物販サイトでは中身のサンプルも見られるのでちょっと雑感を。

「学校さん」を取り上げているのは好感が持てます。いいですね。学校さんが崩壊したことによりチャーリー・ブラウンはぺパミント・パティの学校で彼女と席をシェアすることになるんですが、この辺のエピソードは映画「ヨーロッパの旅」に使われていますね。この映画で原作を取り入れているのはこれだけです。まあ、ここまでは拾わないでしょうが。

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夏休みについてのページもあるようです。展示は45片くらいしかできないのですから、こういう課外行動まで幅を広げない方がいいと思うんですがね。同じくエミリーのエピソードも学校行事ですらないのですから扱うべきではないと思いますがね。

そんなに広げなければならないほどに学校のエピソードって不足してましたっけね?

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3月11日にKADOKAWAから「背中を押してくれるスヌーピーのことば」という書籍が発売になります。

これは、「SNOOPY 心の免疫力を高めるPEANUTSシリーズ」という新しい叢書の第1巻にあたるもののようです。今後も続刊していくんですね。クレジットは『チャールズ・M.・シュルツ(著), 谷川俊太郎(訳)』となっていまして、今後もリイシュー本が出続ける限り谷川さんの名前はクレジットされ続けるのでしょう。

「ことば」とか「心」という単語がタイトルについてますので内容は大体想像がつきますが、過去のそういった本との差別化がどれだけできているのか、というところは気になるところです。ピーナッツに癒しを求めたい、名言を知りたい、と思っている層もぼちぼち食傷気味なんじゃないでしょうか。そういう再生産ばかりしていると、そのうちソッポを向かれますよ。

ワタシは図書館で借りて見届けたいと思います。

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2025.03.08

"Jazz Impressions of A Boy Named Charlie Brown"の Expanded Edition のCD発売決定!

2月9日の記事の後半で書きました、ヴィンス・ガラルディの "Jazz Impressions of A Boy Named Charlie Brown" のレコード・ストア・デイ限定盤の続報です。

この時点では3400枚のレコードのみ限定でCDや配信は予定無しだったんですが、その後CDと配信の発売が決定となりました!。4月11日発売です。そして既に予約できる状態になっています。

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仕様を見ますとCDは2枚組で、1枚目がオリジナルのアルバムで2枚目がアウトテイク集になっています。このオリジナルアルバムの方は何とポール・ブレイクモアがリマスタリングしています。グラミー賞エンジニアですよ。ビル・エヴァンスやマイルス・デイヴィスの発掘音源のリマスターとかをしている人ですよ。もうガラルディはエヴァンスやマイルスと同格ですか?。

アウトテイク集の収録曲はCD版は16曲入りで、レコード・ストア・デイ版のアナログ盤より2曲多くなっています。しかしまあ増えた2曲というのが過去にCDのボーナス・トラックとして収録されていた "Fly Me to the Moon" と "Autumn Leaves" ですので、これは微妙と言えば微妙ですな。

一番気になるのが "Schroeder (Take 2)"と"Schroeder (Take 3)" の2曲のトリオ・ヴァージョンです。タイトルからして元々ソロ・ピアノ用に作曲したのだと思っていましたが、トリオでも録音していたんですな。 

発売元のCraft Recordings のサイトにはプレスリリースがありますので、こちらもご参照いただければと思いますが、"Linus And Lucy"のスタジオ・テスト・ヴァージョンの配信のリンクが貼られていますので、ちょっと聴いてみるのもいいでしょう。"Linus And Lucy" が初めて世に出たのはこのアルバムですから、正に原型と言えましょう。

また、VinceGuaraldiMusicのYouTubeチャンネルでも、このアルバム収録の "Pebble Beach (Take 7)" がアップされています。

 

ワタクシ事ではありますが、テレビで初めてピーナッツのスペシャルを観てから今年で50年です。今回のリリースといい、リー・メンデルソン・スタジオのリリースといい、今まで切望しながら叶わなかったことが去年あたりからどんどん実現していっています。何なんですかこれは。ワタシはもうすぐ死ぬんでしょうか?

・・・いやいや、死ぬのはガラルディの手掛けた15作品すべてがCD化されてからです。何があっても頑張って生きましょう。

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2025.03.07

やっぱりスヌーピーミュージアムはおかしい

そういえば、スヌーピーミュージアムの次の企画展っていつからだっけ?そろそろ図録の予約をしなければ…と思って公式サイトを見に行ったんですが…。

ワタシの感覚からしますと、リピーターを呼び込む最も有効な手段は変化する部分をアピールすることであり、グッズの新商品とともに企画展もそれに当たると思います。

ですから、公式サイトに行ったら、やはり企画展の告知が目立つところにあるのが自然だと思うんですが、なんか違うんですよね。

まず最初に出るのがこれ。

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その次がこれら。

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その次がニュース。なんですがここには企画展の情報はありません。

で、結局トップページは最後までスクロールしても新企画展の情報はありませんでした。いや~トップページに載せないとは斬新な判断ですな。

というわけで、美術館でどんな展示をするのか、という情報をサイト内で探すというちょっと有り得ないことをさせられる羽目になるわけですが、一応2か所見つけました。

「M TOKYO 2025」というのをクリックすると「2025年の年間スケジュールを大発表!シーズンイベントや新企画展も」というページに飛びます。

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この「新企画展も」という表現に、このミュージアムにとって企画展は本当にオマケ的なもんなんだな~という匂いを感じつつ、スクロールしていきますと新企画展の情報がありました。

あと、左側のバーの「MENU」から「EXHIBITION」というのを選ぶと新企画展のページに飛びます。

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なるほど。明日からなんですね…って。いや、こういう情報がこんなに奥まってていいんでしょうかね。

そのほか、「GALLERY」のページをスクロールしていくと、一番最後に新企画展のリンクが貼られていました。これも目立たないんですが。

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で「詳細はこちら」をクリックすると、

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何故か「ホリデー」のページに飛びます。ずさんだなあ…。

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左側のバーにSNSのリンクがありますので、ちょっとXを見てみますと…

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1年前のリニューアルの記事がいまだにトップです。

最近の投稿は「HAPPY SEASONS」というシーズンイベントと新商品紹介5件とルーシー初登場日と当日券情報などと言ったものばかりで、「新企画展〇月〇日スタート」といった情報はありません。一応「企画展ホリデーは3月2日まで」というのはありますが。

FACEBOOKの方も同様で、ここでも新企画展がいつから始まるのかという情報は得られませんでした。ていうか、XとFACEBOOKって内容が全く一緒なんですね。あと、何で閉館期間中に当日券を売っているのだろう?と思ったんですが、今は企画展の改装だけでは閉館しないんですね。他の常設展やブラウンズストアが充実しているという事でもあると思いますが、展示が無くてもグッズとかが買えればいいという人が多いんですかね。入場券を払ってまで?とか思ってしまいますが。

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普段寄り付かないところを見て回ったんですが、まさかこんな事になっていたとは、と色々驚かされました。サイトやSNSの管理がずさんで、やる気が無いことがよく解りました。

改めてグッズを売るのがメインで展示は二の次というスタンスなのだということを理解しました。まあ解ってましたよ。それでも腐ってもCharles M. Schulz Museumのサテライトでありミュージアムの冠を付けているんですから、不本意でも展示の告知を全面に出すのが筋じゃないんですかね?

本家、Charles M. Schulz Museum のサイトはトップが展示の紹介ですよ。美術館なんですから当り前なんですけどね。

ワタシの中でまた一つスヌーピーミュージアムの格が下がってしまったのでした。

3月8日追記

一応今日もXを確認しましたが、投稿されてたのは9時頃の「当日券情報」と12時頃の「ワークショップの受付開始」と13時頃の「もこもこスヌーピーづくり開催告知」のみでした。

公式サイトは、一応トップに表示されるようになりましたが一番じゃないんですよね。「スヌーピーのきょうだいの缶バッジ」のほうが大切なようです。

おいおいおたくら本当に美術館かよ。見下げ果てたやつらだ。

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2025.03.06

大ヒットしていた「スヌーピーとチャーリー」

1972年における映画「スヌーピーとチャーリー」について、キネマ旬報の記事からまとめてみたいと思います。

今回は2月16日に書いたものの補筆的なものになります。この時はキネマ旬報の1972年9月下旬号をもとに書きましたが、それに1972年6月下旬号と11月下旬号の情報を追加しました。

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まず、公開前の1972年6月下旬号で、配給会社(東和)のスタッフと映画評論家たちが参加した同社配給の作品についての座談会が載っていますが、作品の一つとして「スヌーピーとチャーリー」についても話し合われています。

映画評論家の渡辺武信氏は元々ピーナッツが好きで、ピーナツブックスが出る前から大学にピーナッツ同好会というファンサークルがあったことを語っています。この方は評価は高いんですが、ビル・メレンデスの実験的な作風の部分はちょっとっ気に入らなかったようです。

東和のスタッフは当初は漫画だからターゲットは子供かと考えたそうですが、件のピーナッツ同好会もあり、ターゲットは大人だと考えを改めて字幕版での公開を決めたようです。実際に9月公開で子供ターゲットの夏休み興行ではなかったわけです。

編集者or評論家の黒井和夫(和男?)氏もこの座談会では作品として評価していますが、1972年9月下旬号(公開直前の発売)ではちょっと辛辣なことを書いています。どういう事が書かれていたかと言いますと、

アメリカでは絶対の人気の漫画だが、日本ではまだまだ浸透度は少ない。一部に熱狂的なファンがいることも確かだが、このヘんから拡がりを求めて、どの程度まで興行に結びつくか興味深いところだ。
スバル座という小劇場でのロードショウなので、それなりの成績となろうが、そんなにロングにはなりっこない。それよりもアニメーション・ブームのきっかけとなるくらいのオヤッと思わせるだけの出足の良さを期待したい。むしろその方が狙いだといえないだろうか

中々に厳しい意見ですね。まあ映画専門誌としての意見は「ヒットしないだろう」というもので、その後に控えている「シャーロットの贈り物」などのアニメ映画の露払いになればいいくらいの認識だったわけですな。

ところが、フタを開けてみると予想外の大ヒットとなりました。2か月後の11月下旬号では以下のように書かれていました。

有楽町スバル座へ出たアニメーションの「スヌーピーとチャーリー」が同劇場の新記録となる大ヒットを記録している(中略)休日は動きのとれないほどの騒動になっている。
この作品はすでに二年前に輸入されていたものだが、スヌーピーの日本上陸に合せて公開しようという配給会社の案で現在まで持越したものだが、スヌーピーの静かなブームに乗ってキャンペーンも大成功、大ヒットとなった。
二年待った先見の明も見事だが、これほど大きく玄人筋の見方が狂ったのも珍しい(後略)

劇場の新記録となるほどのヒットというのは凄いですな。ちょっとしたヒットではないわけで、キネマ旬報の読みは大外れになったわけです。

しかし配給会社の東和も大したものです。1969年末にアメリカで大ヒットした映画をすぐに輸入したものの、機が熟すまで寝かしたというんですから。事実、その間にピーナツブックス、サンリオのグッズ(何だったのかは不詳)やファミリアのぬいぐるみのヒットがありファン層が拡大していたわけで、東和のスタッフはそうなると見越していたんですね。素晴らしい。ん?昨日書いたガセネタは、ひょっとして公開までのつなぎの情報統制目的の東和自らが流したものだったりして?…それは無いですかね。

しかし単館上映とはいえ、これ程のヒットになっていたという事実は語り継がれていませんね。

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実は日本だけの現象ではなく、本国アメリカでもヒットしていたことがキネマ旬報1970年6月下旬号に書かれています。

これによりますと、ちょっと凄いですよ。定員5900人のニューヨーク・ラジオシティミュージックホールで新記録樹立、年が明けて4月にニューヨーク地区42館で一般封切し第一週37万ドル第二週30万ドルの興収、更にデンヴァー、フィラデルフィア、ロスアンジェルスなど複数の映画館で開館以来の興収・動員を挙げたとのこと…。

これ程の大ヒットになっているのに2年寝かせたという東和の判断はやはり凄いとしか言いようがありませんね。因みにキネマ旬報はこんな記事を書いていますが、この段階ではまだ「スヌーピーとチャーリー」は月世界旅行の映画だと思ってますからね。東和の人も当然キネ旬を読んでいるはずですから、訂正なりなんなりすればよいのに。やっぱりガセネタの黒幕だったんでしょうか??

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2025.03.05

ガセネタをつかまされた人たち

先月、大伴昌司のとんでもない「スヌーピーとチャーリー」の解説について書きましたが、他にも同じような記事が存在するのを見つけました。

それが、こともあろうに映画専門誌のキネマ旬報でした。

キネマ旬報のとんでもない記事は2つありますが、まず1つ目は1969年8月上旬号です。1969年8月というと、まだ「スヌーピーとチャーリー」は公開どころか完成もしていません。

96ページの「ハリウッド・スペシャル・リポート」の中で”アメリカの月着陸アニメ”という見出しとともに次のように紹介しています。

・・・アメリカの月世界着陸にピントを合わせた「チャーリー・ブラウン物語」が完成近い。「ピーナッツ」など特異な作風でアメリカ中に大人気のコミック作家C・シュルツの原作もので、坊やチャーリー・ブラウンがアポロ宇宙船にのりこみ、相棒スヌーピーとファンタスティックな冒険を繰り返す・・・

製作中とはいえ、誰かにつかまされたとしか思えない書きぶりですな~。アポロというフレーズが出てきていますから、やはりアポロ10号とごっちゃになっているような…。

もう一つは、1970年の6月下旬号です。アメリカではもう公開済みの段階ですね。131ページの「ワールド・リポート」で”当りに当った米アニメ大作”という見出しとともに紹介されています。

・・・このアニメは主人公チャーリー・ブラウンが愛犬スヌーピーをつれて月世界旅行に出かけるわけだが、ちょうど復活祭週間にアポロ13号の事故がかさなって、人気に拍車をかけたわけ。おまけにロッド・マックェンの新曲二曲がヒット・パレードで急上昇中・・・

さすがに公開済みの映画ですからコレはちょっと。文責が同一人物かどうかは定かではありませんが、公開前に仕込んだ”チャーリー・ブラウンとスヌーピーが宇宙冒険をする映画”だというのをまだ信じていて、更にアポロ13号のことも新たに吹き込まれているという悲惨な状況に陥っています。メディアの人間として如何なものでしょうか。ロッド・マッケンについても触れていますが、音楽だったらラジオでも聴けるわけですから、ちょっと聴いてみれば絶対に違和感を持つと思うんですがね。これも情報だけで聴いてはいないんでしょうな。

先に書いた大伴昌司の記事がSFマガジン誌の1970年10月号ですから、じゃあ氏はこのキネ旬の記事を鵜吞みにして書いたのか?というとそうでもないようで、氏は”ディズニーとちがって残酷で反道徳的なブラウン坊やの登場は大きな反響を巻き起こすだろう”などとキネ旬の記事にはないことも書いたりしているわけですから、それぞれが別ルートでガセネタをつかまされたのではないかと思えます。

一体どこの誰がそんなガセを仕込んだんでしょう??。わざとガセをつかましたのか。それとも本当にピーナッツとアポロ10号がごっちゃになってしまった只のアホウなのか。

ともかく、ピーナッツが国内で浸透していないが故の珍事だったということは揺るがない事実だと思います。

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2025.03.04

翻訳について:その2

昨日の続きです。

シュルツさんの手書きの書き文字を大事にしたいという思いを百歩譲って認めるとしても、シュルツさん以外の書き文字までをも大事にするということになりますと、ちょっと事情が違ってきます。

2015年に講談社から「スヌーピー、東京に行く!」というコミックが発売になっています。本国での分類は所謂グラフィック・ノヴェルで、有体にに言えばまぁアメコミですね。原題は、"It's Tokyo, Charlie Brown" です。

これはシナリオと鉛筆の下書きがヴィッキー・スコット、ペン入れがお馴染みペイジ・ブラドック、その他カラリング担当とか分業制になっていて正にアメコミ・スタイルで作られています。

とまあ、シュルツさんの死後に作られたシュルツさん以外の作画によるピーナッツなので、吹き出しも当然シュルツさんの手書きではなく所謂 "Peanuts Font" によって作られています。シュルツさんの手書き風であっても実はデジタルフォントなんですな。

であれば、別に大事にする必要はないと思うんですが…。

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四コマ漫画でしたら余白が存分にあるので許されますが、普通のアメコミ・スタイルですとこんな感じで上下左右折り込みの読みづらいところまで駆使して何とか日本語訳をねじ込むことになります。

潔く吹き出しの中を日本語にするべきだったでしょう。ここまでして英語を生かす大義とは一体何?

もう日本語の書籍としては読めたもんではないですな。何でこんな本を作っちゃったんだかって感じです。

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この本はKaBOOM!という出版社から出されたもので、同社は他にも「ライナスと幸せのブランケット」や「がんばれ!スヌーピー」のコミカライズや、原作コミックをブラッシュアップさせたグラフィック・ノヴェルを出したりしています。非常に興味深い内容のものもあり、できれば河出書房新社さんに翻訳版を出してもらいたいと思っているくらいです。

とはいえ、この本のような対訳にされるのは御免ですな。将来的に出版されることがあるとしたら、是非吹き出しの中を日本語にするという英断をしてもらいたいところです。

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2025.03.03

とっておき「スヌーピー」と、翻訳について

かつてワタシはピーナッツ・コレクターとしてすべての書籍(和書)を集めてやろうと意気込んでいましたが、2019年にそれをやめました。

ピーナッツ全集刊行の決定、質の高くないリイシュー本の氾濫、他人が描いた絵本(「スヌーピーを探せ!」など)まで買うのか?、といったことを総合的に考えて、60冊ほどのコレクションを手放しました。以来、基本的にはリイシュー本は買わないようにしています。

手放した本の中に『とっておき「スヌーピー」』もありました。これは産経新聞に連載していた「ひもとくスヌーピーの50年」の書籍化で、この連載を読むためにワタシは購読紙を変えたもんです。図書館に蔵書しているのを見つけたのでちょっと借りてみました。

この本はフルカラーでパッと見はいい本に見えます。ただ、コラムと英語のワンポイントレッスンがちょっとうざいんですよね(連載時から思ってました)。

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これは一例ですが、まずこのストリップについてワタシはとても好きです。好きなんですが、コラムには読めばわかるようなことしか書いてなくてはっきり言って邪魔です。また、英語のワンポイントですが、「あなたは私の〇〇を台無しにしました」なんて構文を日常的に使いますかね。日本人同士でもこんな会話はしませんよ。そんな感じでもやもやするのでした。

この叢書は7~8巻は刊行されていたような。まさか復刊希望とかされてないよな?と思い、復刊ドットコムのサイトを確認しましたが流石にありませんでした。実は意外とマイナーな存在だったりとか?

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ついでにピーナッツ関連書籍のリクエスト状況なんぞも見てみましたが、「スヌーピー全集」とか一度復刻されたことがあるものでもリクエストが集まっているんですね。コメントを見ますと「全集でもう一度読みたいです」というのもあり、う~ん、全集とは名ばかりなんだけどな~と思ったり…。

同サイトのショッピングのページに「ピーナッツ・エッセンス」がありました。

この叢書については過去に何度か書いていますが、非常に雑な編集でワタシとしては悪書という評価です。これを買うんでしたら他のリイシュー本にしてほしいくらいの、それほどの本です。リクエストした人は読んだことが無いから判らないんでしょうな。

しかしサイトの謳い文句では、『スヌーピーコミックのイチオシがギュッと詰まった傑作選!』『時代とともに変わっていくスヌーピーたちの姿が見られます』と美辞麗句が並んでいます。傑作選と思えるようなチョイスがされているとは思いませんね。せめて、年代順に並べ直していれば『時代とともに変わっていく』様子もわかり価値のある本になっていたと思います。

言ってもしょうがないことですが。もう一つ注目したいポイントはこれですね。

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この『読みやすい日本語訳文の吹き出し』というところ。逆に吹き出しが英語だと読みにくいということを出版社側が認めてしまっているということなんですよね。

『日本語でピーナッツを読みたい』と思っている人たちは、『吹き出しの中の書き文字も含めてシュルツさんの作品である』と信望している謎の勢力によって『読みにくい』コミックを強制されているんですよ。この謎の勢力は読みにくいことを承知で押し付けているんですから悪質です。謎の勢力なんて書くと陰謀論者みたいで良くないかもしれませんが、出版界にはそういう人が多分いるんでしょう。

日本以外でシュルツさんの手書きの書き文字が重要視されていないのは諸外国の書籍を調べればわかります。どの国もそんな事よりも『漫画としての読みやすさ』の方が大事なんですよね。読みにくいと読者から敬遠されて売れないというビジネスの側面もあるでしょうが、それが当たり前なんです。

もしくは、吹き出しが英語でないと読者に受け入れられないとか思っていたりとか?。でもそれって思い込みかもしれませんよ。

今、日本人の英語力は非英語圏内でも92位で、まだ下がり傾向にあるというデータもあります。ほとんどの日本人は英語が読めないはずです。本当に『読みづらい本』が求められているんでしょうか。英語の勉強に~とか言うかもしれませんが、それにしても吹き出しが英語であることが正しいという説明にはなりません。そもそも新聞四コマの吹き出しの英語って全部大文字じゃないですか。それで英語の勉強ですか?

かつての朝日新聞社刊の「ブロンディ」や鶴書房の「ピーナツブックス」は、欄外に活字で印字された英文について、その正確さがアメリカのライセンサーから高く評価されていました。日本語吹き出しイコール原語をないがしろにすることではないというところに立ち返ってもいいんじゃないでしょうかね。コトは手書きの書き文字への妄信から始まっていることだと思いますので、まずはここから脱却されることを願っています。

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