再考:ピーナッツ日本上陸〇〇周年の根拠とは?
2018年は「ピーナッツ日本上陸50周年」と言われ、いくつか催しがあったと記憶しています。2028年には60周年が祝われることが濃厚です。あと3年ありますが、3年しかないとも言えますので、今のうちに少し整理を始めるのもいいかと思います。
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当時の産経新聞に記事では、『ソニー・クリエイティブプロダクツ(東京都港区)によると、日本で初めてピーナッツのキャラクター商品が作られたのは昭和43年』と書かれていました。言い出しっぺはライセンシーであるソニーということなんでしょうが、1968年に何があったのかは明記されていません。
普通に考えますと、そのキャラクター商品が何であるのか写真付きで紹介されていそうなものですが、そういった具体的な話は一切なく、ただ1968年という数字だけがまかり通っているという感じでした。
何が1968年に登場したのか?。候補と考えられるのは主に3つです。鶴書房のピーナツブックスと、ファミリアのぬいぐるみと、サンリオのグッズ、といったところでしょう。
まずピーナツブックスですが、「全日本出版物総目録 昭和44年版」によりますと、『4月、12月 12冊 各240円』という記述とともに1巻から12巻までのタイトルが羅列されていますので、1969年4月に刊行開始されたと考えられます(他の書籍でも裏付けは取れていますが割愛します)。ということで、除外です。
ファミリアのぬいぐるみはどうでしょう。「実践・キャラクター戦略:イメージアップの商品学」(1975年刊)を見ますと、創業者である坂野淳子専務が『四十五年四月からスヌーピーのぬいぐるみを売り出したが』と取材に対して語っていますので、これも1970年ということで除外ですね。
最後にサンリオはどうでしょうか。「日本ライセンシング年鑑 1983~84」という本にサンリオがピーナッツのライセンシーになった時のことが書かれていますが、『サンリオ・グリーティングがホールマークの日本代理店として発足した昭和44年には』という記述があります。また、「実例・企業の競争戦略シリーズ 2」(1977年刊)のサンリオについての記述でも『四十四年、平凡社、日本クロスと資本金一億円のサンリオグリーティングを設立、アメリカのホールマークカード社のライセンシーをとる』となっており、サンリオが1968年にはピーナッツのグッズを発売していなかったことが裏付けられますので除外となります。
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では、1968年に発売されたキャラクター商品とは何だったのか?”日本で初めてピーナッツのライセンシーになったのはサンリオ”という通説を信じるのであれば、日本企業ではなく必然的に海外企業ということになります。
「実業の世界」(1976年刊)の『いま見直される「キャラクター戦略」』という章の中で『昭和四十八年頃から「ホールマーク」ブランドのグリーティング・カードの専用機が、百貨店や一般販売店々頭に登場したことは、ご記憶だろうか』と書かれています。ホールマーク社は日本市場を視野に入れて60年代後半からグリーティングカードの販売を始めていました。恐らくはこのホールマーク社の上陸というのが日本上陸のことではないか、と推測されます。
ホールマーク社の歴史についてはまだあまり資料を読み込めていませんので、ここは継続して調べようと思います。
因みに、日本にはそういうカード文化が無かったため売り上げ不振で一旦撤退し、のちにサンリオがライセンシーとなりますがサンリオはカードではなくキャラクターを使用した別商品を販売し、それがヒットにつながっっていった・・・という流れになっていきます(複数の本に書かれていたことを雑多にまとめるとこんな感じです)。
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改めて考えてみますと「日本上陸」の定義って何なんでしょうね。輸入品であってもそれが初めてであれば初上陸ということになるんでしょうか(確かに上陸という表現は合っていますが)。消費者庁にでも問い合わせれば指標を出してくれますでしょうか。
しかしそれを言ってしまいますと、1966年にリリースされたロイヤルガーズメンのレコード「SNOOPY VS. THE RED BARON」はどうなんだ、とか、同じく1966年に日本の出版社により刊行された「ピーナッツ福音書」はどうなんだ、とか、色々と異論が浮かんできてしまいます。
個人的には2028年になっても何の催しも行われず自然消滅して無かったことになるのが一番平和的解決策のようにも思えますがね。
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