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2025.01.20

「チャーリー・ブラウンのバレンタイン」のCD届く

1月17日発売の "Be My Valentine, Charlie Brown" 「チャーリー・ブラウンのバレンタイン」のCDが届きました。今回は早かったですな。輸入業者さんもワタシのような客がいることを認知して取っておいてくれたんでしょうかね。

…パッケージの紙質が少し粗悪になっています。う~ん、危機感を感じますね~。やはり売り上げが厳しいのでしょうか?

ともかくライナーノートを読んでいきます。

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ライナーを書いているのはショーン・メンデルソン、ジェイソン・メンデルソン、デリック・バングのおなじみの3名です。

巻頭のショーン・メンデルソンの "Garaldi's brillant and third-to-last score" という書き方が辛い…。「最後から3番目のスコア」ですよ。このあと2作手掛けた後にガラルディは亡くなってしまうんですよね。

このサントラが録音されたのは1974年(放送は75年)で、デリック・バングによりますと、当時ガラルディは北カリフォルニアの地元では人気がありましたが、契約しているレーベルは無くレコードはもう5年も作っておらず、全国的にはほとんど知られていない人になっていたようです。ピーナッツのTVスペシャルの仕事で全国的な知名度だったはずなのに。それはサントラ盤としてリリースされたのが最初の「チャーリー・ブラウンのクリスマス」だけだったというのもあったんでしょう。今のようにリリースされていれば…。それでもライヴで忙しかったようですし、サントラの仕事もあり経済的には問題なかったようです。

このサントラのレコーディングは、1974年の12月9・17・18・23・30日の5日だったとのことです。年の瀬に随分頑張っていたんですな。で、年が明けて75年、作品のオンエア後にガラルディはまたライヴに戻り、夏になると次作 "You're a Good Sport, Charlie Brown" のサントラのオファーが来た、という流れになっていきます。

デリック・バング曰く、この次作 "You're a Good Sport, Charlie Brown" がガラルディのシンセサウンドの頂点とのことですが、これはワタシも大いに同意しますね。詳しいことはサントラが出るときに書きたいと思います(出してね)が、一つだけ言っておきたいのはモトクロスをテーマにした作品のサントラだったら普通はああいうサウンドにはしないだろうということです。もしガラルディの死がもう少し早かったら凡庸な作曲家(エド・ボガスとか)が凡庸な曲を付けていたはずで、これはアニメ作品としての評価にも影響が出ていただろうと思います。

それはそれとして、本作についてもバング氏は新しいおもちゃを最高の使い方をしていると褒めています。 新しいおもちゃというのはこのサントラのサウンドを特徴づけているフェンダーローズとアープストリングのことです。バング氏は、このライナーノートの自分のパートのタイトルとして "A Sweet Treat from Vince Guaraldi" …「ヴィンス・ガラルディからの甘いごちそう」と題していますが、この甘さというのにローズとアープは大貢献していると言えるでしょう。アープの使用については「ヴァレンタインデーの精神に奉仕している」とまで書いています。

70年代のストリングス系のシンセといいますと、日本ではオランダのソリーナがよく使われていたように思います(ムーンライダーズの岡田徹とか)。これを機にちょっと調べましたがアープストリングというのはソリーナからOEM供給されていたものだそうなので基本的には一緒なんですね。アープはアメリカの会社ですのでガラルディはこっちを使ったんでしょうな。

曲についても色々書かれていて興味深いです。掻い摘みますが、まず本作は「ライナス・アンド・ルーシー」などおなじみのメロディの再利用が全然ありません。かわりに "Heartburn Waltz" という新曲をメインにしてそのヴァリエーションを多数使用しています。一応「ライナス・アンド・ルーシー」とクレジットされているトラックは2つありますが、言われても「ライナス・アンド・ルーシー」とは気づけないような曲になっています。よく聴くと「ライナス・アンド・ルーシー」のブリッジの部分とコード進行が一緒だということに気が付きますが、本当にその程度の類似です。

"Jennie L" というタイトルの曲が収録されています。これはサリーの所謂「プロペラ帽だ、ヨーヨーだ」のシーンにかかる曲ですが、ライナーによればこのタイトルが何を(誰を)指しているのかは解っていないようです。ガラルディはピーナッツ用の曲なのに "Cops and Robbers" とか "African Sleigh Ride" とか時々謎なタイトルを付けますね。余談ですが、ワタシはこの "African Sleigh Ride"は "There's No Time For Love, Charlie Brown" のキーになる曲なんではないかと思っています(サントラの発売を熱望します)。

・・・・・・

あと、ライナーノートでの音楽以外のネタですが、番組を観てチャーリー・ブラウンの処遇に腹を立てた子供たちがU.F.S.のオフィスやサンタローザにヴァレンタイン・プレゼントを贈り、それが何百にもなったんだそうです。こういうのは微笑ましいですね。

それとエンドテロップ。スヌーピーの足人形ですが、ライナーノートによると人形の顔とテロップの人物は符合しているとのこと。ガラルディはオンエアを観てびっくりしたんだそうです。

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しかしこれはデフォルメと言いますか、可愛くなりすぎていて気が付きませんでしたよ。なるほど、監督のフィル・ローマンはメガホンを持ってますし、音楽監督のジョン・スコット・トロッターは指揮棒を持っていますね。

…そういえば(また音楽に戻ってしまいますが)、ライナーノートを読んでも音楽監督であるジョン・スコット・トロッターが何をしていたのかが全然わかりませんでした。尺とかタイミングなどについてもガラルディ本人がかなり綿密にやっていたみたいですし、このエンドテロップの画像を確認するまでトロッターのことは完全に忘れていました。

高齢でしたし、契約上仕方がなくクレジットしていたのでしょうか?

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