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2024.09.17

ピーナッツのコミックとの再会:その4

私的50周年回顧ネタ。

ピーナッツのコミック本は長らく鶴書房~角川書店の独占で刊行されてきました。稀に「スヌーピーはゴルフに夢中」のパルコ出版などの参入といった例はありましたが、それはあくまで単発のことでした。

しかし1995年、ここに突然講談社が乗り込んできました。

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1995年から翌年にかけて「SNOOPYのもっと気楽に」という文庫本シリーズを全5巻が講談社から刊行されました。

これには驚きました。

1995年当時には読むことができなくなっている1986年8月以前のストリップを収録しているのならまだわかりますが、逆に刊行中の「A Peanuts Book featuring Snoopy(以下「featuring Snoopy」)」からストリップがチョイスされており、実質的に「featuring Snoopy」の抄本になっていたのです。一体どのような契約になっていたのでしょうか?

また、この「SNOOPYのもっと気楽に」の腰巻には “スヌーピーと仲間たちに出会えば、どんなときでも、気が軽くなる、元気が出てくる!” と書かれており、これは今日まで続く『ピーナッツ=癒し、哲学、自己啓発』という売り方の走りとなるものでした。

因みに、「SNOOPYのもっと気楽に」は一般の講談社文庫ではなく『講談社+α文庫』という叢書から出されていました。この叢書は、「生き方」「ことば」「生活情報」「エンターテイメント」「歴史」「事典・辞典」「心理・宗教」「ビジネス・ノンフィクション」といった所謂小説ではないものを取り扱うためのもので1993年にスタートしていました。

この叢書がピーナッツを「生き方」や「心理」という切り口で扱おうとしたきっかけは、1995年に新潮社から刊行されたエイブラハム・J・ツワルスキーの「いいことから始めよう」ではないかと思っています。

ツワルスキーは、アメリカでピーナッツを題材にした心理分析で有名になっており、「いいことから始めよう」はその彼の考えを本にまとめたものでした。

最初の1冊こそ新潮社でしたが、ツワルスキーの著書は以降は講談社が出版するようになり、「スヌーピーたちの性格心理分析」という日本向けに書き下ろされたものを含め2000年までに6冊のピーナッツ心理分析本を刊行しました。

「SNOOPYのもっと気楽に」にはツワルスキーは登場しませんでしたが影響を受けていたのは明らかです。心理学者の河合隼雄が解説を買うなど箔付け(?)も完璧でした。

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ワタシはこの本の情報をどこで仕入れたのか記憶がありません。恐らく書店の店頭で平積みされているのを見て知ったのだと思います。

前年の1994年、姉妹社の廃業により絶版となっていた長谷川町子の「サザエさん」が朝日文庫から刊行され始め話題になっていました。それもあり、この刊行については『サザエさんの次はスヌーピーか』などと囁かれたりしていました。新聞四コマ繋がり、ということもあったと思いますが、かつて人気だったものが文庫化されて話題になるという意味合いもあったと思います。これは「featuring Snoopy」の存在があまり認識されていないことと、やはり文庫は強いということを表していると思いました。

講談社のこの売り方は大成功だったようです。ワタシも切り口はともかくこれで読者が増えるのならばと当初は大歓迎でした。まずは読むこと、そしてそれをきっかけに普通に漫画としての面白さがわかる編集本などに進んで行ってくれれば確実にファンは増えるはずです。

講談社は続いて「ピーナッツ・エッセンス」というタイトルでピーナツブックス~スヌーピーブックス全86巻を15巻に編集したシリーズを刊行すると発表しました。これはとてもいいタイミングです。「SNOOPYのもっと気楽に」の読者がこの本に流れれば、きっとピーナッツの面白さを知ることになるだろうと大いに期待しました。

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