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2024.05.04

ピーナッツのコミックとの出会い:その1

私的50周年回顧ネタ。

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ワタシとピーナッツのコミックとの初遭遇は過去に何度もこのブログで書いていますが、1974年に友人から借りたピーナツブックス37巻「選挙戦だよ、スヌーピー」でした。

ワタシの家庭は基本的に漫画は禁止と明言されていたわけではないですが、とりあえず父親は漫画が嫌いであり、小遣いも貰っていなかったので、漫画を買って読むという習慣はありませんでした。70年代はそういう家庭は多かったと思います。漫画を読むのは主に理髪店で、「デビルマン」なんかをまとめ読みしていましたね。

まあ漫画を読む習慣自体がありませんでしたので特に不満は無く、積極的に友人の漫画を借りて貪り読むなんてことも無かったわけです。

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小学校時代、女の子たちはスヌーピーがプリントされたファミリアのTシャツやトレーナーをよく着ていたので、スヌーピーは女子が好むものだと思っていました。当時大人気だった岡崎友紀が大のスヌーピー・マニアで、彼女のおかげでスヌーピーが漫画であることは一応知ってはいましたが、特に興味はなく自分が読むものではないだろうと思っていました。

しかし1974年のある日、友人のK君が学校にピーナツブックスと貝塚ひろしの「柔道賛歌」の2冊を持ってきているのを見て、何故かワタシはそれを借りようと思ったのでした。

K君は男子で一人っ子なので女きょうだいもおらず、何故ピーナツブックスを持っていたのかは謎ですが、それよりもそれを借りようと思ったワタシのほうが謎です。それまで友達から漫画を借りるということをしたことが無く(それほど漫画に興味が無かった)、何故そんなことを思い立ったのかはわかりませんが、興味を持ったとうことだけは間違いありません。

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かくして、2冊の漫画を借りたワタシは家に持ち帰りそれらを読みました。

「柔道賛歌」はアニマル・モーガンが出てくる話を収録しており、こちらはこちらで中々面白かったのですが、それよりもピーナツブックスの方に衝撃を受けました。

あまり漫画に免疫が無かったことも原因かもしれませんが、とにかく今まで読んできた漫画とは全く異質なものに感じられました。

この巻の一番最初に収録されているストリップ(つまりワタシが一番最初に読んだストリップ)は、チャーリー・ブラウンが「ビーグル」の語源についての本を読んでいるというものでした。ビーグルの語源はフランス語の「ベーグル」から採られた、と書いてあるのを読み、スヌーピーに「ホントかい?」と尋ねると、彼は「ウィ!」と答えるのでした。

一番最初に読んだストリップがビーグルについてだったというのにも運命的なものを感じますが、この「ウィ!」というオチ、この粋な感じに初っ端からやられました。

その他、とにかくセリフ回しなどがクールでかっこよく、とても惹かれるものがありました。「彼」「彼女」といった三人称を使うというのも新鮮で、これはすぐに日常会話に取り入れました。

また、四コマ漫画でありながら連続したストーリーになっているのにも驚きました。「サザエさん」「フジ三太郎」といった当時人気の四コマ漫画には無かった手法です。

例えば、この巻にはペパミント・パティとスヌーピーがターンアバウトダンスに行くというエピソードが収録されていますが、スヌーピーのことをからかわれたパティはその少年のことを殴ってしまいます。普通の漫画だったらこの後の顛末がちゃんと描かれますが、この漫画では殴った次のコマではもう帰路についているのです。

暴力沙汰を起こしたことで退場させられたということと、最後のコマのスヌーピーの「シャペロンに嚙みついたのはボクだってことをお忘れなく」というセリフで2つのストリップの間に何が起こったのかを想像するしかないわけですが、それがまたワクワクしていいんですね。行間を読むではないですが、すべてを描かなくても伝わるし逆にその方が想像力が搔き立てられて面白いんだということに気付かされました。続き物の四コマだからこそ可能な表現方法なわけです。

また、このエピソードでは子供たちだけでダンスパーティという大人びたところへ行くわけなんですが、こういうところも戦前派親父に抑圧されていた子供としてとても惹かれました。何か日本にはない自由さを感じました。これは巻を読み進めるうちに思いが強くなりましたが、日本にも子供の祭りはありますが、大抵は主体は大人で子供は見世物にされたりするものばかりです。それに引き換えこの漫画では子供による子供のための祭りやお祝い事が数多描かれており、まるで別世界でした。

昭和40年代、まだまだアメリカは遠かった…本当に憧憬でした。その思いは一層強まりました。

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しかし、何よりも一番大きかったのはギャグマンガとして完成度が高かったことです。

ウッドストックが南へ渡るためにスヌーピーが道案内することになります。その様子を見たペパミント・パティがチャックに電話するのですが、チャックが「ウッドストックは南へ渡りたいが道がわからない。しかし渡らないと生態学を混乱させてしまうのでスヌーピーに道案内させているんだ」と答えると、パティは「あんた、フライが頭に当たりすぎた人みたいなことを言ってるよ」と呆れ顔をします。

こういうのって日本の漫画にはまず無いと思います。鳥は生態学を混乱させたくないから義務で南へ渡っているのか、とか、なんでチャーリー・ブラウンはそこまで知っているんだ、とか、パティのリアクションもまあそうなるよな、とか、とにかく突っ込みどころ満載で四コマでここまで笑わせられるのは凄いと思いました。

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こうして、たった1冊の漫画本でワタシはピーナッツの虜になってしまったのでした。クラスで一番のピーナッツ好きとなり、如何にこの漫画が面白いのかをクラスメイトに吹聴し、友人たちを巻き込んでいったのでした。

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