昨日2月16日、Apple TV+でスヌーピー・プレゼンツの新作アニメ「おかえり、フランクリン」が配信され、早速昨日のうちに視聴しました。
本作は友情についての話しでした。ピーナッツの面々の町に引っ越してきたフランクリンがチャーリー・ブラウンとの友情を育み、また、みんなに受け入れられる(というのは変な表現?)までの話しになっています。以下、感想など。
①キャラクター設定について
フランクリンは比較的メイン寄りのキャラクターですが、実はその性格設定はあまり明確じゃないんですよね。
はっきりしているのは、とりあえず優等生っぽいこと、習い事をしていること、父親がベトナムに従軍していること、祖父の話をよくすること、このくらいでしょうか。
祖父の話をよくするのは、父親が従軍していて不在なので祖父との距離が近いということなのかもしれません。シュルツさんはベトナム従軍の設定を後々まで大事にしていて、連載末期のフランクリンが祖父の話をよくするということにしたのかもしれませんね。
と、ここまでは原作での話で、ともかく今回の作品のためにこの不十分なフランクリンの設定を深掘りしなければならなかったのですが、クレイグ・シュルツ氏は、アームストロング姓のモデルとなった黒人漫画家のロブ・アームストロングをチームに加えて彼の体験などをちりばめたようです。
出来上がったフランクリンの設定は、父親が軍人のため転居が多く、友達と深い付き合いがし辛いという悩みを抱えているというものでした。この辺はロブ氏のアイディアのようです。そして、祖父の言葉をまとめたノートを頼りに友達作りに励もうとします。
うーん。まあいいんですが、ワタシ的にはフランクリンにこういう人付き合いに悩むような内向的なキャラクターというのはちょっとどうなのかな~と思えました。何せ、人に話しかける前に祖父の言葉が書いてあるノートを参照するんですよ。これはイメージが崩れるといいますか…。
あと気になったのが、おじいちゃん子のくせに祖父との絡み(ポワポワ声との会話)は無いんですよね。ノートに祖父の金言が書いてあるだけなんですが、その設定のために祖父は既に故人で、祖父の遺した言葉を大事にしているかのような印象を受けてしまいます。これは良かったんでしょうかね。ノートではなく折々で祖父が助言をするという演出の方が良かったんではないでしょうか。
その代わり、父親は結構家にいるんですよね(軍人ってそんなに家にいるもんなんでしょうか?)。父親とは絡みがあります。でも近くにいる父親よりも祖父の言葉の方が大事っぽいんですよね。何だかよくわかりません。
ん?フランクリンのセリフの"Grampa always told me"って過去形なので本当に故人だったりして。そうだとしたらかなり早世ですね。
好きなミュージシャンは、スティービー・ワンダー、リトル・リチャード、ジェームズ・ブラウン、ジョン・コルトレーン。これはそういう時代設定ということなんでしょうかね。
あと、チャーリー・ブラウンの父親は軍隊にいたことがあり、除隊して理髪店をしている、ということになっていました!「ヨーロッパの旅」では従軍していたのは祖父だったじゃないですか。
②吹き替えについて
これまでのスヌーピー・プレゼンツ・シリーズは女の子メインの話ばかりで、今回初めて男の子がメインになったわけですが、そのメインの男の子の声優が二人とも演技に難があり相当辛い事になりました。
フランクリンはこれまでは生徒会長など優等生的な役柄が多かったので表面化してませんでしたが、今回は感情をぶつけたりするシーンも多く、今の子役にはそれをこなす演技力が備わっていないことが露呈してしまいました。
聡明な黒人少年のはずなのにたどたどしく喋るので違和感がある、と言いますか、端的に、黒人っぽくない、とも言えます(英語で観ると"Man!"と言っているシーンがあるので、やはりフランクリンも黒人だなーと思ったりしましたが)。
表情からすると本当はこういう喋り方じゃないんじゃないか?と違和感を覚えるシーンは英語で観直すと解決するんですが、要は演技が成っていないということですね。
前半のフランクリンが友達作りに苦心するシーン、英語だと彼の方が普通の少年であり、ピーナッツの面々がおかしいというのがわかりますが、吹き替えでは本当に人付き合いが苦手そうなキャラになってしまっています。喋るのも苦手そうな。
ニカっと笑ってジョークを言うシーンでも英語では自然なんですが、吹き替えではただのジョーク下手の滑りキャラになってしまっています。
ジェームズ・ブラウンの話になった時の、「同じブラウン姓だけど親戚?」というシーンも、英語だとジョークで言っているというのがちゃんと伝わるんですが、吹き替えだと、え?本気で言ってる?という感じに聞こえてしまいます。
都度都度祖父の言葉のノートを見返す演出も相まって、コイツ本当にコミュ障なんでは?と思ってしまいます。
おしまいの方の、フリーダ、パティ、ヴァイオレットの3人が喋っているシーンなど、とてもさりげない感じがして相変わらず女声陣は上手いと思いました。男声陣でも、シャーミーやピッグペンとかはそれなりにいいんですがね。何でメイン・キャラばかり良くないんでしょーね(でもライナスは上手くなりましたね)。
③翻訳について
ただ、問題は吹き替え子役の演技力だけではなく、翻訳にもあると思いました。
全般にダイアログが良くないんです。なんというか、男の子のセリフがお坊ちゃん言葉過ぎるんですよ。特に今回はレースの話ですから、それなりに荒っぽさも必要になります。もっと緊張感を持たせて欲しかったですね。
「僕に任せて」じゃなくて「僕に任せろ」でしょ。「待って」じゃなくて「待てよ」でしょ。「誰なの?」じゃなくて「誰だ!」でしょ。「君から言って」じゃなくて「君から言えよ」でしょ。「そうなの?」じゃなくて「そうかい?」でしょ。「僕たちはまだ相棒ってことなの?」じゃなくて「僕たちはまだ相棒なのかい?」でしょ。「勝つ事より大事な事もあるもん」じゃなくて「あるだろ」でしょ。フランクリンはもっとファンキーにしてほしかったですね~。
女の子のセリフの方が生き生きした言葉に訳されている感じもしましたね。
④音楽について
ジェフ・モローは本当に信頼がおける作曲家ですね。とても素晴らしいです。ガラルディのジャズを完全に引き継いでいて、デヴィッド・ベノワ以上の適任者と言えるでしょう。
また、挿入曲も、チャック・ベリーの「ジョニー・B・グッド」やビリー・プレストンの「ナッシング・フロム・ナッシング」など、フランクリンが好きそうな黒人ミュージシャンを使っています(挿入曲については何故かエンドテロップに記載なし)。
⑤そのほか
abc7.comのニュース記事からの情報をいくつか。
フランクリンがピーナッツの面々の町に到着した時、"There was a lack of variety in this place."と言います。「この町は多様性に欠けている」と訳されています。
このセリフについて、ロブ氏は「決して説教臭くなりたくなかったが、『ジャンプ・スタート』で扱ったのと同じ方法で扱う必要があった」と言っています。『ジャンプ・スタート』というのは氏の漫画ですね。理解を深めるためには読んだ方がいいかも?。
このセリフの意図は何でしょう。このセリフを言うシーンでは白人ばかりが目についたからでしょうか。所詮ピーナッツ・キャラは白人だらけだ、と言いたいんでしょうかね。
クライマックスで、フランクリンはみんなの中心に座って楽しくやってます。ライナスがわざわざ「君のために席を取っておいたよ」と言って座らせるのですが、これは「チャーリー・ブラウン感謝祭」に関する誤解を正すためにロブ氏が仕込んだ演出なんだそうです。日本人からすれば何でもないシーンですがね。
というのも、「感謝祭」の裏庭パーティーのシーンではフランクリンがテーブルの片側に一人で座っているため、一部の人が彼が完全に受け入れられていないのではないかと思っているからなんだそうです。アメリカではそういう些末なことでも分析する人がいるんですな。Wokeの国ですね。
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全般的に厳しい感想になってしまいましたが、やはり吹き替えに難ありというところですね。英語だと実にスムーズに鑑賞できますので英語の方をお勧めします。
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