「スヌーピーがいたアメリカ」第7章を読む
第7章はフェミニズムについてです。
ピーナッツは女性が強い。といえばルーシーですが、ルーシー登場以前からパティやヴァイオレットなどが結構男性陣を圧倒していました。根本的にそういう漫画なんだと言っても過言ではありません。
シュルツさんは、男が女に威張っていても面白くないが逆だったら面白い、と考えていたようです。
しかし、シュルツさんはただ単純に漫画のレトリックのために強い女性を描いていた訳ではなく、伝統的なジェンダーロールを支持しつつもフェミニズムについては結構真剣に取り組んでいたことがこの本を読むとわかります。
テニスのボビー・リッグスとマーガレット・コートの対戦でリッグスが圧勝した時、ルーシーが怒ってリッグス宛に「運が良かっただけよ」と手紙を書くストリップがあります。リッグスは大変な女性蔑視野郎だったので、多くの女性は留飲を下げたんじゃないでしょうか。このあと、リッグスはビリー・ジーン・キング(シュルツさんとは友情を築いていましたね)と対戦してストレート負けしますが、一連の話は「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」という映画になっていますね。
ピーナッツの強い女性と言えば、もう一人ペパミント・パティがいます。彼女はルーシーの不得手なスポーツのジャンルで覇権してますが、本書では彼女のルーシーにはない深みについて触れています。
ペパミント・パティがサマーキャンプで赤毛の女の子に会って泣き出してしまうというエピソードがあります。このエピソードは、登場以来スポーツ万能で快活な少女(授業中居眠りをするというキャラ付けはまだない)だった彼女が、実はコンプレックスを抱えていたことが判明してしまうという非常に重要なものだったのですが、それだけではなく「ルックスに執着する社会の虚栄への批判」それがペパミント・パティのような少女にとっても有害だという批判の波を起こそうとしていたんだそうです。深いなあ。
ピーナッツでペパミント・パティほど心の内や家庭環境などが掘り起こされているキャラは他にいません。これについてはまた別に書こうと思います(一度書いてますが)。
シュルツさんおよびピーナッツは、中絶、職場での男女平等、学校の性教育の問題に関わっていたそうですが、ピーナッツと性教育の関係が本書ではちょっと不明瞭で、シュルツさんがどのような考えを持ち、どのような発言をしていたか、というのには興味が尽きません。どこかの媒体ではっきりするといなあ。
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